坪井智也vsマラジカ 結果・戦評|坪井のボクシングを崩したマラジカの巧さ

坪井智也vsマラジカ 結果・戦評|坪井のボクシングを崩したマラジカの巧さ

2026年9月27日のWBC世界スーパーフライ級王座決定戦で、坪井智也はリカルド・マラジカに1-2の判定で敗れ、プロ5戦目での世界王座獲得はならなかった。

筆者は事前記事で坪井の6回TKO勝ちを予想していた。しかし、アマチュア世界王者の坪井を破ったのは、マラジカの距離を操る巧さだったと考える。長いジャブで入り口を塞ぎ、坪井が踏み込むところへ右ストレートを返す。距離が詰まれば体を預けて連打を切り、離れ直せばまたジャブを届かせた。坪井も中盤には持ち味を出したが、最後まで自分のボクシングを続けることはできなかった。

目次

公式結果と筆者の採点

項目内容
対戦坪井智也 vs リカルド・マラジカ
試合WBC世界スーパーフライ級王座決定・12回戦
公式結果マラジカの判定勝ち(2-1)
公式採点115-113で坪井、116-112と115-113でマラジカ
筆者の採点114-114

筆者は2〜7回を坪井、1回と8〜12回をマラジカに付けた。最終的には6ラウンドずつの114-114。ただし、接戦のラウンドには別の付け方もある。採点が割れたこと自体は理解できる試合だった。

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選手\回123456789101112合計
坪井910101010101099999114
マラジカ109999991010101010114

※筆者の採点。公式ジャッジのラウンド別採点ではない。

筆者の採点は7回終了時で69-64、8回終了時で78-74と坪井がリードしていた。一方、公式ジャッジの8回終了時の公開採点は77-75が2人、76-76が1人。筆者の見方より坪井のリードを小さく評価していた。筆者の採点でも残る4回をマラジカが取って114-114になる。途中で優勢に見えた坪井が最終判定で敗れた背景には、後半にマラジカが距離と有効打で取り返したラウンドの評価がある。

8回終了時の公開採点前(Prime Video Sport JPの投稿)

JBCの採点票では、筆者がマラジカに付けた8回を2人が坪井に付けている。一方、9回と11回は3人ともマラジカを支持した。最後の4回の評価も完全には一致せず、坪井支持のジャッジは10・12回を坪井に付け、ほかの2人は9〜12回をすべてマラジカに付けた。どの回が割れたのかを見ると、1-2の判定になった理由をより具体的に捉えられる。

坪井の攻撃が続く距離を、マラジカが作らせなかった

筆者のメモでは、マラジカは坪井より身長で約10センチ、リーチで約9センチ上回る。坪井は初回、やや急いで入り込んだように見え、バッティングも起きた。2〜4回には少しずつ距離を修正した印象がある。それでも、マラジカが引いてジャブを打つ中間距離では、坪井が細かい連打を出したい位置まで入るのは簡単ではなかった。

坪井が近い距離をつくった時の速い連打には、坪井らしさがあった。筆者も2〜7回を坪井に付けている。一方、離れた位置ではマラジカのジャブが先に届き、右ストレートも坪井の顔を捉える場面が見えた。マラジカはバックステップ後にすぐ前へ出られるため、単純に追うだけでは距離を固定できない。

距離が一度詰まっても、マラジカに体を預けられると連打は続かない。逆に離れ直すと、坪井にはもう一度長いジャブを越えて入り直す仕事が生じる。長い距離ではジャブ、踏み込みには右、近づかれれば体を預ける。この切り替えによって、坪井が接近戦で連打する時間を短くした点にマラジカの巧さがあった。

マラジカの右と、連打を止める体の使い方

マラジカのワンツーは、右を脇に収めたまま前へ入り、体をやや沈めながら伸ばしていたように見える。坪井が近い距離へ来た時には、連打を数発受けても体を預けて攻撃を続けさせない場面があった。これは守るだけの動作ではなく、坪井の得意な連続攻撃を短く切る働きをした。

もっとも、マラジカが全局面を支配したわけではない。坪井の接近戦の連打が映える回もあり、ジャブを当てて試合全体を完全にコントロールしていたとも言い切れない。どちらの攻撃を有効打として重く見るかで、接戦のラウンドは割れ得た。

8回以降をマラジカに付けた理由

4回終了時の公開採点は39-37で坪井が1人、38-38が2人。8回終了時は77-75で坪井が2人、76-76が1人だった。したがって「4回の公開採点で坪井が負けていると分かり、戦術を変えた」とは言えない。

筆者には8回前後から、坪井が細かく跳ねるようなステップを減らし、ガードを固めて歩いて前へ出る時間が増えたように見えた。積極的にポイントを取りに行く意図があったかもしれないが、陣営の考えは確認できない。

この前進に対してマラジカは、ジャブを当て、坪井が入ってくるところへ右ストレートを返した。坪井もボディやフックをまとめたが、筆者には近距離の連打の一部より、マラジカが距離を作って当てたパンチの方が明確に映った。8〜12回をマラジカに付けたのは、その差を評価したためだ。

坪井のボクシングを崩したマラジカの巧さ

事前記事では、坪井がマラジカのジャブを外し、打ち終わりに反撃を受けない位置を取れるかを勝敗の鍵に挙げた。実際にはマラジカが距離を作り直し、坪井が入るところにジャブや右を合わせ、近づかれても連打を切った。筆者のTKO予想は外れた。中盤に坪井が取ったと見るラウンドもあったからこそ、後半にマラジカが坪井の得意な形を続けさせなかった点が勝敗を分けたと考える。

筆者の114-114という採点は、マラジカの勝利を不当とするものではない。接戦のラウンドで明確に届いたパンチと連打をどう評価するかによって、マラジカ支持の判定も理解できる。次に坪井を見るときは、長いジャブを越え、連打が続く距離にどうとどまるかに注目したい。

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この記事を書いた人

元A級プロボクサー。26歳のとき、会社員として働きながらダイエットを目的にボクシングを始め、28歳でプロライセンスを取得。29歳でデビューし、37歳を目前に引退した。プロ通算戦績は15戦5勝8敗2分。

本業では、企業オウンドメディアのYouTubeスポーツ番組でディレクターを務める。RING LIVERARYでは、自身のリング経験とコンテンツ制作の知見をもとに、主に後楽園ホールで行われる国内興行の試合結果・戦評や注目選手の解説を発信。結果だけでなく、勝敗を分けたポイントや技術的な見どころまで、元プロの視点から掘り下げています。

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