谷原羽奈が新王者、四元志桜里が初防衛|あしたのジョーメモリアル2026結果・戦評

谷原羽奈が新王者、四元志桜里が初防衛|あしたのジョーメモリアル2026結果・戦評

2026年9月28日、後楽園ホールで「2026あしたのジョーメモリアル」が開催された。日本女子アトム級タイトルマッチでは谷原羽奈が王者モンブランみきに3者とも60-54で勝利。WBOアジアパシフィック女子アトム級タイトルマッチでは四元志桜里が樋口藍に4回TKO勝ちした。

筆者は配信映像で6試合を視聴した。谷原がワンツーをガードの内側へ通した攻撃、四元の対サウスポーの踏み込みを中心に、近藤明広の最終戦やその他の試合も振り返る。

目次

全6試合の結果

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区分対戦結果
日本女子アトム級タイトルマッチモンブランみき vs 谷原羽奈谷原が3-0判定勝ち(60-54×3)
WBOアジアパシフィック女子アトム級タイトルマッチ四元志桜里 vs 樋口藍四元が4回1分30秒TKO勝ち
スーパーライト級8回戦池田竜司 vs アル・トヨゴン池田が6回1分56秒TKO勝ち
ウェルター級8回戦近藤明広 vs 松岡蓮近藤が4回54秒に勝利
ミドル級4回戦山田悠貴 vs ヘラクレス・メイヤメイヤが1回2分39秒に勝利
女子アトム級4回戦安部エミリー vs 中尾都中尾が2-0判定勝ち(39-37、40-36、38-38)

※結果と終了時刻は筆者の視聴メモによる。

谷原羽奈vsモンブランみき|長いワンツーをガードの内側へ

日本女子アトム級王者のモンブランに挑んだ谷原は、60-54が3者という判定で勝利した。筆者が印象に残ったのは、ワンツーの長さだけでなく、そのパンチがモンブランのガードの内側を通っていたことだ。谷原は序盤からジャブと右ストレートをまっすぐ出し、モンブランが前に出ようとするところで先にパンチを届かせていた。

ワンツーを当てた後にも攻撃が続いた

長いパンチを当てても、そこですぐに攻撃を終えていれば、モンブランに再び踏み込まれる余地が残る。谷原はワンツーからフックやボディへつなぎ、前進してきた相手に次のパンチも出していた。モンブランの前進を止める場面が増えたのは、この「当てて終わりにしない」攻撃も大きかったと見る。

さらに、間合いが詰まったときにはアッパーやボディを使った。近くに入られたら何もできないという形ではなく、距離に応じて打つパンチを変えていた。モンブランが接近を図るたびに谷原の攻撃を受ける展開が続き、筆者にはダメージも徐々に蓄積しているように映った。ただし、その影響をパンチごとに切り分けることはできない。

細かなステップが迎撃の距離を作り直した

もう一つの違いは足の動きだ。谷原は細かなステップで位置を変え、接近されてもバックステップして再びパンチを返した。長いワンツーが使える距離と、アッパーやボディで対応する距離を行き来し、モンブランが自分の得意な位置に居続けることを許さなかった。

谷原の方がパンチとステップの速度で上回っているように見えたが、速さそのもの以上に、下がった後も反撃できる位置を保ったことを評価したい。モンブランが前に出ても、谷原のパンチを避けてから自分の攻撃へつなげる時間を作りにくかった。3者が全6回を谷原に付けた採点は、長いパンチだけでなく、近距離での対応と距離の作り直しを含めた試合運びを示していると考える。

四元志桜里vs樋口藍|サウスポーの外側を取り、踏み込んだ

WBOアジアパシフィック女子アトム級王者の四元が、挑戦者の樋口を4回1分30秒TKOで退けた。樋口はサウスポーで、四元よりやや背が高い。四元が正面からそのまま近づけば、樋口の長い左やジャブが先に届きかねない。それでも四元は重心を低く保ち、顔をガードしながら、パンチが届くかどうかの距離まで入った。

ガードを固めて近づき、外側から右を通す

四元は近づいてから漫然と打ち合ったわけではない。筆者が注目したのは、オーソドックスの四元がサウスポーの樋口に踏み込む際の前足の位置だ。四元は自分の前足を樋口の前足の外側へ置き、右を相手の正面へ通しやすい角度を作っていた。この位置なら樋口の左を正面から受けにくくもなる。ただし、足を外へ置くだけで攻撃を防げるわけではない。四元の場合は、低い重心とガード、踏み込む速さが一緒に機能していた。

届くか届かないかの位置から、一気に樋口の懐へ入る。その瞬間に距離の主導権が四元へ移り、近い位置ではパンチの速さと手数でも樋口を上回ったように見えた。樋口が長い距離でパンチを選ぶ前に四元の攻撃が始まるため、サウスポーの利点を使った攻防を続けにくかった。

組んだ場面でも樋口は体勢を整えにくかった

接近戦では両者が組み、樋口が体勢を崩して転ぶ場面もあった。これを四元の力だけが原因と断定することはできない。ただ、組み合った後も四元が前へ出る圧力を保ち、樋口は自分の足場を整えて次の攻撃へ移るのが難しそうに見えた。遠い距離では踏み込まれ、近い距離では四元の手数に対応を迫られる。樋口が攻撃を組み立てる時間を作れなかったことが、試合全体の差につながったと思う。

筆者には、樋口の反撃が四元の踏み込みをためらわせるほど継続しなかったように映った。樋口が同じ相手を攻略するなら、前に出てくる四元へ距離を取り直して合わせるパンチや、出入りの速さが論点になる。ただし、これは今回の攻防から考えられる対応策であって、樋口がそれを実行できたかどうかとは別の話だ。

四元の勝因を単にフィジカルの強さと片付けるよりも、低い姿勢で正面のパンチに備え、外側の位置を取り、好機に一気に入るという順序に注目したい。技術と強さの両方が表れた防衛戦だった。

近藤明広vs松岡蓮|最後の試合で光った、飛び込むジャブ

近藤が最終戦で見せた強みは、右ストレートの威力だけではなかった。松岡のジャブがぎりぎり届かない位置を保ち、松岡がわずかに前へ出る瞬間に合わせて、自分のジャブを踏み込ませたことだ。

近藤は顎を引き、顔の位置を低くしながら、ジャブをまっすぐ通していた。松岡からすれば、自分が間合いを詰めようとした瞬間に左が飛んでくる。後ろへ外そうとしても間に合わず、近藤のジャブを受ける場面が繰り返された。

この左が届いた後の右も速かった。近藤は前半からジャブだけでなく右ストレートも当て、4回にはワンツーからダウンを奪った。松岡も近藤のジャブへアッパーを合わせようとしていたが、近藤の入るタイミングを捉え切れなかった。最後にしっかり攻撃をまとめたところまで、経験のある近藤らしい試合運びだった。

最終戦の勝ち方を分けたのは「ベテランだから」という言葉だけでは説明できない、間合いの数センチと踏み込む瞬間の選び方だったと思う。

池田竜司vsアル・トヨゴン|ボディから主導権を移した

池田は序盤、アル・トヨゴンの独特なタイミングを見ている時間が長かった。ジャブが少なく、すぐに主導権を握った試合ではない。相手は飛び込む左フックやストレートを見せ、池田もまずはその入り方に対応していた。

展開が動き始めたのは3回以降だ。池田は左ボディを交え、相手の胴体へパンチを集めていった。回が進むにつれてアル・トヨゴンの動きが落ち、池田が自分の距離で攻撃をまとめる時間が増えたように見えた。

6回、相手の体勢が崩れたところを池田は逃さず、右ストレートでダウンを奪った。再開後も攻撃をまとめ、6回1分56秒でTKO勝ち。序盤に相手の間合いを測り、中盤からボディを使って試合を自分の側へ引き寄せた一戦だった。

ヘラクレス・メイヤvs山田悠貴|上を意識させてからのアッパー

山田が勢いよく入ってくるなか、メイヤはバックステップしながらジャブを打ち、距離を保った。ただ後退するのではなく、下がる動作の中でも左を出していたのが良かった。山田のガードが低い場面には左フックを合わせ、右ストレートも見せていた。

接近を続ける山田に対し、メイヤのアッパーが効果的だった。筆者には、ジャブやストレート、フックが先に上へ届いていたことで、山田が頭部への攻撃を意識する展開になっていたように見える。その中で下から右アッパーを突き上げ、最後のダウンにつなげた。

1回2分39秒という早い決着だったが、単に強い一発を当てたわけではない。下がりながら距離を保ち、入ってきた相手に異なる角度からパンチを合わせたことが、フィニッシュにつながった。

中尾都vs安部エミリー|頭を振る前進で接近戦へ

中尾は重心を低く保ち、頭と体を振りながら前進した。安部のジャブやストレートをかわして距離を詰め、近い位置で手数を出す。2回には偶然のバッティングによる中断もあり、両者の頭が近づく距離での攻防が続いた。

安部も途中で打ち合ったが、正面に立ったまま中尾の圧力を受け、体勢を崩す場面があった。長いパンチだけで中尾の前進を止めるのは難しかったように見える。判定は39-37、40-36、38-38で中尾の2-0勝ち。1人は引き分けと見たが、筆者には中尾が得意な距離を作った時間が長く映った。

安部が同じタイプの相手を止めるなら、入られた後にガードした手で素早く返す、外からのフックに内側からアッパーを合わせるといった迎撃が考えられる。一方、中尾は頭を振りながら手数を維持する強さを見せた。フックやボディに加えてアッパーや打ち下ろす右が増えれば、相手はさらに防ぎにくくなるだろう。

筆者が選ぶ、今回のベストパフォーマンス3人

視聴した6試合の中で、筆者が特に評価した選手を順位にすると次の通りだ。公式の賞や採点ではなく、今回の試合内容に対する個人的な評価である。

  1. 谷原羽奈――モンブランみきに3者とも60-54の判定勝ち。ワンツーをガードの内側へ通すだけでなく、フックやボディへ攻撃をつなぎ、細かなステップで迎撃の位置を作り直した。
  2. 四元志桜里――樋口藍に4回TKO勝ち。重心を低く保ち、サウスポーの前足の外側を取ってから一気に踏み込む攻めが光った。
  3. ヘラクレス・メイヤ――山田悠貴に1回2分39秒で勝利。下がりながらジャブで距離を保ち、入ってくる相手にフックや右アッパーを合わせた。

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この記事を書いた人

元A級プロボクサー。26歳のとき、会社員として働きながらダイエットを目的にボクシングを始め、28歳でプロライセンスを取得。29歳でデビューし、37歳を目前に引退した。プロ通算戦績は15戦5勝8敗2分。

本業では、企業オウンドメディアのYouTubeスポーツ番組でディレクターを務める。RING LIVERARYでは、自身のリング経験とコンテンツ制作の知見をもとに、主に後楽園ホールで行われる国内興行の試合結果・戦評や注目選手の解説を発信。結果だけでなく、勝敗を分けたポイントや技術的な見どころまで、元プロの視点から掘り下げています。

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