2026年9月2日、横浜BUNTAIで「Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ」が開催されました。
メインでは吉良大弥選手がカルロス・カニサレス選手を7回TKOで下し、プロ5戦目でWBA世界ライトフライ級王座を獲得。セミファイナルでは、石井武志選手がウィルフレド・メンデス選手に初回KO勝ちし、WBA世界ミニマム級王者となりました。
この記事では、Leminoの配信で全試合を視聴した元A級プロボクサーが、結果だけでは分からない距離の取り方やパンチの組み立て、勝敗を分けた攻防を振り返ります。
※以下は、今回の試合を見た筆者個人の分析です。選手や陣営が公表していない狙いについては、映像からの見立てとして記載しています。
Lemino BOXING全6試合の結果一覧
| 試合 | 対戦カード | 結果 |
|---|---|---|
| WBA世界ライトフライ級王座決定戦 | 吉良大弥 vs カルロス・カニサレス | 吉良が7回38秒TKO勝ち |
| WBA世界ミニマム級王座決定戦 | 石井武志 vs ウィルフレド・メンデス | 石井が1回1分5秒KO勝ち |
| 61.0kg契約8回戦 | 藤木勇我 vs ジュフェル・サリナ | 藤木が5回1分24秒TKO勝ち |
| 日本ミニマム級タイトルマッチ | 森且貴 vs 杉浦義 | 1-0の引き分け。森が王座防衛 |
| フェザー級8回戦 | 大橋蓮 vs 北本慶伍 | 2回28秒、負傷引き分け |
| スーパーフェザー級8回戦 | 嶋田淳也 vs サタポーン・サアット | 嶋田が2回2分33秒KO勝ち |
- 相手を誘い込み、左フックを合わせた吉良大弥
- 長身サウスポーに距離を作らせなかった石井武志
- 森且貴の手数と杉浦義の強打で評価が分かれた日本タイトル戦
吉良大弥vsカルロス・カニサレス|吉良が7回TKOで世界王座獲得
勝者・決着:吉良大弥の7回38秒TKO勝ち
序盤から吉良選手がジャブを突き、カニサレス選手もジャブを返していきます。しかし、立ち上がりから両者のスピードには差がありました。
吉良選手は腕や上半身の厚みも目立ち、序盤はまるで排気量の違うエンジンを積んだ車のように、スピードとパワーの両面で高い出力を見せます。
左の使い方も多彩でした。通常のジャブだけでなく、下から伸ばすフリッカージャブや、接近戦ではハイガードの位置から短く打つジャブを使い分けています。
さらに、右のオーバーハンド、右ボディーから左ボディーへの返しなど、上下へパンチを散らし、カニサレス選手に的を絞らせません。
3回には左フックで最初のダウンを奪います。元世界王者のカニサレス選手もボディーや連打で応戦し、4回以降は前進を強めて距離を詰める場面が増えました。
一方、カニサレス選手は左フックを打つ瞬間に、右のガードがわずかに下がる場面がありました。吉良選手はラウンドを重ねながら、同じ左フックを合わせる機会を探していたように思います。
7回、前へ出たカニサレス選手が左フックを振ったところへ、吉良選手の左フックがカウンターで入りました。カニサレス選手はキャンバスへ倒れ、レフェリーが試合を止めました。
元プロとして注目したポイント|相手を誘い込んだ左フック
フィニッシュの左フックで注目したいのは、吉良選手が右足側へ体重を残し、上体をわずかに引きながら打っていたことです。
前へ踏み込んで強く振り抜くフックではなく、カニサレス選手の前進と左フックを誘い込み、その軌道から自分の頭を外しながらコンパクトに左を返しています。
これにより、自分はカニサレス選手の左フックをまともにもらわず、自分のパンチだけを当てる形になりました。単純な相打ちではなく、相手に打たせたところへ合わせる「誘いの左フック」だったように見えました。
3回に一度ダウンを奪ったパンチを見せながら、最後は相手が打ち返してくるタイミングで同じ左フックを決めています。スピードやパワーだけでなく、相手の反応を読みながらフィニッシュまで組み立てた点に、吉良選手の完成度の高さが表れていました。
石井武志vsウィルフレド・メンデス|開始65秒で世界王座獲得
勝者・決着:石井武志の1回1分5秒KO勝ち
長身のサウスポーであるメンデス選手に対し、石井選手は開始直後からプレッシャーをかけました。
距離を詰められたメンデス選手も体を寄せて攻撃を切ろうとしますが、石井選手が左ボディーフックをカウンターで打ち込みます。これを効かせると、追撃の右フックでダウンを奪い、メンデス選手は立ち上がることができませんでした。
元プロとして注目したポイント|距離を潰す戦略と世界戦に懸ける気迫
この試合で重要だったのは、石井選手が初回から迷わず距離を潰したことだと思います。
身長差のあるサウスポーに外側で構えさせると、前の手や足を使われ、入るタイミングが難しくなります。だからこそ、初回から積極的に前へ出るのは戦略として有効でした。
石井選手はメンデス選手の態勢が整う前からプレッシャーをかけ、自分のパンチが届く距離まで一気に入っています。
試合前にも石井選手は「1ラウンドのファーストコンタクトが大事」と話していました。開始直後から勝負を仕掛ける準備をしていたことが分かります。
距離を潰す戦略が機能したことに加え、初の世界タイトルを必ずつかむという石井選手の気迫が、迷いのない攻勢に表れていました。技術と戦略、そして世界戦に懸ける気持ちが初回KOにつながった試合だったと思います。
藤木勇我vsジュフェル・サリナ|強いジャブを軸に5回TKO
勝者・決着:藤木勇我の5回1分24秒TKO勝ち
サウスポーのサリナ選手に対し、藤木選手は初回から左ジャブを当てていきました。
オーソドックスとサウスポーの対戦は互いの前足がぶつかりやすく、正面からジャブを当てるのが簡単ではありません。それでも藤木選手は、遠い位置から一気に入るステップインジャブを機能させていました。
後ろ足で床を蹴る動きと踏み込みが連動しているため、距離があってもジャブに強さがあります。ジャブとストレートを顔へ集めるだけでなく、右ボディーも織り交ぜ、上下へ攻撃を散らしました。
サリナ選手も左右の強いパンチを返しますが、藤木選手はガードを固めて対応。スピードとパンチの精度で主導権を握ります。
最後は5回、藤木選手の右フックがカウンターで入り、サリナ選手がロープ際へ崩れたところでレフェリーが試合を止めました。
元プロとして注目したポイント|サウスポーにも届いたステップインジャブ
藤木選手の強みとして最も印象に残ったのは、やはりジャブです。
単に手が速いだけでなく、細かなステップで自分の位置を調整し、後ろ足の蹴りをジャブへ伝えています。そのため、サウスポー相手にも距離の遠さを感じさせず、自分から攻撃を始められていました。
この試合では藤木選手の完成度が大きく上回って見えました。ただし、今回だけで国内トップ選手との力関係まで判断することはできません。今後、国内ランカーと対戦したときに、このジャブとスピードがどこまで通用するのかも見てみたいです。
森且貴vs杉浦義|評価軸が分かれた日本ミニマム級タイトル戦
決着:1-0(96-94、95-95、95-95)の引き分け。森且貴が王座防衛
序盤、杉浦選手が前へプレッシャーをかけ、森選手は足を使いながら距離を保ちました。
森選手は離れた位置からジャブを突き、打ったら動く、動いたらまた打つというテンポで試合を進めます。ジャブで杉浦選手のガードを上げさせ、右ボディーや左ボディーへつなげる組み立ても見せました。
一方の杉浦選手は、森選手の連打に対してガードする時間が長くなり、序盤は攻防が分かれる場面が目立ちます。それでも距離を詰めた場面では、重心を落とした強いパンチを返していました。
5回終了時の公開採点は、49-46で森選手が1者、48-47で杉浦選手が2者。私は森選手のジャブ、運動量、試合の主導権を評価していたため、2者が杉浦選手を支持したことは意外でした。
ただし、森選手のジャブにはガードの上を捉えたものもあり、ジャッジは杉浦選手が距離を詰めて打った強いパンチを、より明確な有効打として評価した可能性があります。
公開採点後、森選手は手数をさらに増やしました。しかし、距離が近くなったことで、試合は杉浦選手が強いパンチを出しやすい展開へ変わっていきます。
終盤は互いに頭をつけ、ボディーや細かなコンビネーションを交換。クリンチの少ない、見応えのある接近戦になりました。
元プロとして注目したポイント|手数と強い有効打のどちらを評価するか
この試合は、森選手のジャブと豊富な手数を評価するか、杉浦選手が近距離で打った強いパンチを評価するかによって、採点が分かれやすい内容でした。
私は前半の森選手を比較的高く評価していた一方、後半は杉浦選手が自分の距離へ持ち込み、強いパンチを当てる場面が増えたと見ています。
そのため、96-94で森選手を支持した採点は少し意外でしたが、95-95の引き分けは理解できる範囲です。ジャッジによって「ガードの上でも試合を動かした手数」と「数は少なくても強く見える有効打」の比重が違ったことが、1-0の引き分けにつながったように思います。
→ 関連記事:ボクシングの採点基準を元プロが実体験から解説
大橋蓮vs北本慶伍|偶然のバッティングで負傷引き分け
決着:2回28秒、偶然のバッティングによる負傷引き分け
サウスポーの大橋選手に対し、オーソドックスの北本選手は長い左ジャブを出して距離を保ちました。
オーソドックスとサウスポーの対戦は正面の距離が遠くなりやすく、互いに前足の外側を取るポジション争いが重要になります。
北本選手がジャブを多く出す一方、大橋選手は左ストレートを打てる位置を探していました。2回、大橋選手が踏み込んだところへ北本選手も反応して入り、偶然に頭同士が衝突。大橋選手が眉間をカットし、試合続行不能となりました。
元プロとして注目したポイント|サウスポーとの前足の位置
バッティングは偶然でしたが、互いに逆構えの選手が同時に踏み込んだことで頭がぶつかっています。
北本選手が長いジャブで作っていた距離へ、大橋選手がどのように入り込むのか。試合の焦点が見え始めたところでの終了だったため、両者が再び対戦する機会があれば続きを見たいカードです。
嶋田淳也vsサタポーン・サアット|近距離のリターンから2回KO
勝者・決着:嶋田淳也の2回2分33秒KO勝ち
序盤から互いにジャブとワンツーを出し合い、サタポーン選手が強いパンチを振りながら前へ出ました。
嶋田選手はガードを固め、相手のパンチを受けた後に右アッパーなどを返していきます。サタポーン選手がさらに前へ出た場面では、バックステップでわずかに距離を調整し、正面からの被弾を避けていました。
2回終盤、近距離から嶋田選手の右フックが入り、サタポーン選手がダウン。立ち上がろうとしましたが、カウントアウトとなりました。
元プロとして注目したポイント|ガードで終わらずすぐに返した
体格で上回る嶋田選手は、外側から距離を取る戦い方もできたと思います。しかし今回は、頭が近づく距離でも冷静にパンチを防ぎ、そのままリターンを返していました。
特に、ボディーをガードした手から右アッパーを返す動きが効果的でした。相手の攻撃を防いで終わるのではなく、ガードした直後にパンチを返すことで、サタポーン選手に一方的な前進を許しません。
最後の右フックも、近距離で相手の打ち終わりを捉えたパンチでした。守備から攻撃への切り替えの速さが、KOにつながったと感じます。
全6試合はLeminoで見逃し配信
今回取り上げた全6試合は、Leminoプレミアムで2026年9月16日23時59分まで見逃し配信される予定です。
吉良選手がカニサレス選手を誘い込んだ左フック、石井選手が開始直後から距離を潰した攻勢、森選手と杉浦選手で評価が分かれた攻防は、映像で見直すとより分かりやすくなります。
Leminoの料金や登録方法、ボクシング配信の視聴方法は、以下の記事で解説しています。
→ Leminoでボクシングを見る方法|料金・登録・解約手順を解説
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まとめ|2人の新世界王者が異なる形で強さを見せた
吉良大弥選手は、ジャブと上下の打ち分けで試合を作り、最後は相手を誘い込む左フックで7回TKO勝ち。プロ5戦目で世界王座を獲得しました。
石井武志選手は、長身サウスポーに距離を作らせず、開始65秒でKO。初回から勝負をかける戦略と、世界タイトルに懸ける気迫が結果につながりました。
アンダーカードでも、藤木勇我選手のステップインジャブ、森且貴選手と杉浦義選手の評価が分かれた攻防、嶋田淳也選手の守備から攻撃への切り替えなど、結果だけでは分からない技術が見られました。
試合を見るときは、パンチが当たった瞬間だけでなく、その前にどのように距離を作り、相手の反応を引き出していたかにも注目してみてください。


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