【PHOENIX BATTLE 161結果・戦評】佐々木尽が6回KOで3冠統一

【PHOENIX BATTLE 161結果・戦評】佐々木尽が6回KOで3冠統一

2026年9月21日、東京たま未来メッセで「Lemino BOXING PHOENIX BATTLE 161」が開催された。

メインイベントでは、OPBF東洋太平洋ウェルター級王者の佐々木尽が、日本・WBOアジアパシフィック同級王者セムジュ・デビッドと対戦。6回58秒KOで勝利し、日本・OPBF・WBOアジアパシフィックの3冠を統一した。

佐々木の強打が注目される一戦だったが、改めて光ったのはジャブだった。左フックや左ボディだけでなく、距離をつくるジャブと、相手の動きに反応してすぐ打ち返す技術が決着につながった。ジャブも非常に良く、強打を生かす起点として機能していた。

セミファイナルでは石井竜虎が日本ユース・ウェルター級王座を獲得。末國龍汰は日本ユース・ライトフライ級王座を防衛した。Leminoの配信を視聴した元プロボクサーの視点から、実施された全5試合の結果と勝敗を分けたポイントを振り返る。

目次

PHOENIX BATTLE 161の全試合結果

  • 日本・OPBF・WBOアジアパシフィック・ウェルター級3冠統一戦:佐々木尽がセムジュ・デビッドに6回58秒KO勝ち
  • 日本ユース・ウェルター級王座決定戦:石井竜虎が福永啄巳に1回2分45秒TKO勝ち
  • 日本ユース・ライトフライ級タイトルマッチ:末國龍汰が細川弦汰に5回1分13秒TKO勝ち
  • 53.0kg契約6回戦:堀江尭斗が臼井春樹に6回1分17秒TKO勝ち
  • スーパーフェザー級4回戦:門岡健人が岡田幹太に2回1分15秒TKO勝ち

予定されていた日本ユース・ミドル級王座決定戦、盛合竜也vs佐々木革は盛合の棄権により中止となった。

佐々木尽vsセムジュ・デビッド|改めて光ったジャブが導いたウェルター級3冠統一

結果:佐々木尽が6回58秒KO勝ち

佐々木の武器といえば、強烈な左フックと左ボディを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、この試合で改めて光ったのはジャブだった。ジャブも非常に良く、佐々木の強打を生かすための重要な役割を果たしていた。

踏み込みが速く、ややフリッカー気味の軌道で伸びてくる。セムジュからすれば、遠い位置から視界へ突然入ってくるパンチだ。ジャブを意識させれば、同じ左から出るフックやボディがさらに見えにくくなる。反対に、フックとボディの威力を警戒させているからこそ、ジャブも通る。多彩な左が互いを生かしていた。

セムジュは長いガードとジャブで距離を保とうとした。だが、ジャブだけで佐々木の前進を止めるのは難しい。佐々木はガードを低く構える時間が長いものの、相手のパンチを見ながら頭をわずかに動かし、まともには受けない。セムジュの技巧を、圧力だけでなく反応と距離感でも上回っていった。

KOを生んだ、受けた直後の打ち返し

決着の場面では、セムジュが左フックを放った後、左腕で佐々木の頭を押さえるような形になった。その瞬間、セムジュの左側頭部が空く。佐々木は左フックを受けた側の手をすぐ攻撃へ切り替え、開いたテンプルへ右を打ち込んだ。

守った手をそのまま返すため、動きが短く、相手も反応しにくい。派手な強打だけでなく、ガードから反撃までの速さが生んだKOだった。

セムジュの距離のうまさを押しつぶしたのは佐々木の圧力。ただし、その圧力を成立させたのは、非常に良かったジャブと反応の速さだ。力だけでなく、強打を当てるまでの組み立てにも進化が見えた3冠統一戦だった。

石井竜虎vs福永啄巳|得意な距離へ入れた石井が初回TKO

結果:石井竜虎が1回2分45秒TKO勝ち

サウスポーの石井は、一発一発に重さがあった。直線のパンチだけでなく、接近した場面ではアッパーも使い、内と外から福永のガードを揺さぶった。

福永に必要だったのは、前の手を使って石井の接近を止め、左ストレートを打たせにくい位置を保つことだった。しかし、遠くも近くもない中途半端な距離にとどまり、石井が強打を振れる間合いで戦う時間が長くなった。

石井はその機会を逃さず、一気に試合を終わらせた。相手を自分のパンチが最も生きる距離へ置き、初回で日本ユース・ウェルター級王座を獲得。今後も対戦相手にとって、まず受けないことを考えなければならないパンチ力になる。

末國龍汰vs細川弦汰|手数を上回ったクリーンヒット

結果:末國龍汰が5回1分13秒TKO勝ち

細川は開始から前へ出て、体を寄せながら手数を集めた。末國は下がりながらも小さなステップで距離をつくり、すぐにワンツーやフックを返す。構図は明確だった。細川の手数に対し、末國は一発ごとの正確さで対抗した。

細川は頭を振りながら前進したものの、上体だけで動く場面では両手が下がりやすい。さらに正面から入るため、顔が上がったところへ末國のワンツーやアッパーを受けた。接近しても手を出し続ける積極性はあったが、攻撃を急ぐほど守備の隙が広がっていった。

細川は手数を出し続けることで主導権を握ろうとしたが、その分、一発一発のパンチは軽くなってしまう。結果として、末國の体力を大きく奪うまでには至らなかった。一方の末國も、初回は細川の勢いに多少なりとも戸惑う部分があったように見える。しかし、同じペースで細川が終始前へ出続け、後半になるにつれて圧力が減っていけば、末國にとって対応するのはそこまで困難ではなかったのではないかと推測される。

実際、末國は細川の勢いに飲まれなかった。相手の手数に同じ手数で対抗せず、動きを見てガードの間へ短いパンチを通す。細川の方が多く打っていても、クリーンヒットとダメージでは末國が上回る展開となった。

4回には、細川が独特のステップで入るタイミングへカウンターを合わせてダウンを奪う。5回も細川が前進を続けたが、手を出すことへ意識が向いたところで末國がコンパクトな連打をまとめ、レフェリーが試合を止めた。

手数は相手へ圧力をかける。ただし、相手を見ずに打ち続ければ、カウンターを受ける隙にもなる。相手の動きを最後まで見失わなかった末國が、正確さと冷静さで日本ユース王座を守った。

堀江尭斗vs臼井春樹|足を止めなかった堀江の距離管理

結果:堀江尭斗が6回1分17秒TKO勝ち

臼井は2019年の東日本フライ級新人王。今回は約4年半ぶりの復帰戦で、実戦から離れていた期間の長さは小さくないハンデだった。それでも序盤からハイレベルなジャブの差し合いを見せ、打たれた直後のリターンも速い。長くスピードのある臼井のジャブに対し、堀江もすぐに返して主導権を渡さなかった。

1回、堀江のワンツーが臼井のガードの間を抜き、ダウンを奪う。臼井は立ち上がると前へ出て、手数と上下の打ち分けで取り返しにいった。ダメージを引きずった様子はなく、長いブランクを感じさせない攻撃だった。

ただ、先に失点したことで、臼井は本来より近い距離で戦う時間が増えた。堀江は足を止めず、下がりながら自分の間合いをつくり、追ってくる臼井へパンチを合わせる。臼井が攻める必要に迫られた分、堀江は迎え撃つ形を選びやすくなった。

堀江の勝因は、ダウンを奪った後も無理に倒しにいかず、最後まで足を使って有利な距離を保ったことだ。臼井のジャブとコンビネーションも高い水準にあったからこそ、その攻撃をさばき続けて6回に仕留めた堀江の対応力が際立った。

敗れはしたものの、4年半のブランクを経た復帰戦で、臼井が見せた技術は高い水準にあった。試合勘が戻った次戦で、どのようなボクシングを見せるか。今後も注目したい選手の一人だ。

岡田幹太vs門岡健人|ボディから顔面へつないだ門岡

結果:門岡健人が2回1分15秒TKO勝ち

サウスポーの岡田は積極的に仕掛け、速いリターンと強いパンチで門岡を攻めた。一方で、攻撃中にガードが下がる場面があり、距離を詰めて連打へ入ったところへ門岡の左フックを受けた。

サウスポーとオーソドックスの対戦は、互いのストレートを警戒して距離が遠くなりやすい。遠い間合いでは低いガードが機能することもあるが、自分から踏み込めば相手との距離は縮まる。岡田には、攻めに入る瞬間だけでもガードの位置を変える必要があった。

1回にダウンを奪った門岡は、2回に入ると攻撃の幅を広げた。特にボディストレートが効果的。先に腹を突いたことで、岡田の顔面への反応を遅らせた。

最後はロープ際でボディストレートから左フックを顎へつなぎ、そのまま連打。レフェリーが試合を止めた。岡田のガードの隙を突いただけでなく、上下に狙いを散らして同じ場所へ意識を集中させなかったことが門岡の勝因だった。

まとめ|佐々木尽の強打を生かした「非常に良いジャブ」

5試合はいずれもストップ決着となったが、力任せに倒した試合ばかりではない。

門岡はボディから顔面へ攻撃を散らし、堀江は足を止めずに有利な距離を守った。末國は相手の手数へ付き合わず、クリーンヒットの質で上回る。細川は手数を出し続けたものの、一発ごとの威力と後半の圧力が落ち、末國の体力を奪うまでには至らなかった。石井は強打が生きる間合いへ試合を持ち込んだ。

そしてメインの佐々木。目を引くのは破壊力でも、その一撃を届かせる起点はジャブだった。左フックと左ボディを警戒させ、非常に良いジャブで距離を詰める。決着の場面では、受けた直後に最短距離で右を返した。

ジャブで相手の意識を動かし、強打の軌道を隠す。さらに、相手の攻撃を受けた直後には素早く打ち返す。佐々木の勝利は、強打の威力だけでなく、ジャブと反応の速さを含めた攻撃の組み立てによって生まれた。

3本のベルトを統一した結果以上に、世界を見据えるうえで攻撃の組み立てが広がっていることを感じさせる勝利だった。

Leminoで配信されるボクシングの視聴方法は、Leminoでボクシングを見る方法で詳しく解説している。今後の国内ボクシングの配信予定は、ボクシング配信予定一覧で随時更新中だ。

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この記事を書いた人

元A級プロボクサー。26歳のとき、会社員として働きながらダイエットを目的にボクシングを始め、28歳でプロライセンスを取得。29歳でデビューし、37歳を目前に引退した。プロ通算戦績は15戦5勝8敗2分。

本業では、企業オウンドメディアのYouTubeスポーツ番組でディレクターを務める。RING LIVERARYでは、自身のリング経験とコンテンツ制作の知見をもとに、主に後楽園ホールで行われる国内興行の試合結果・戦評や注目選手の解説を発信。結果だけでなく、勝敗を分けたポイントや技術的な見どころまで、元プロの視点から掘り下げています。

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