【OVER HEAT BOXERS NIGHT.118 結果・戦評】印波優心が山口友士を1回TKO

【OVER HEAT BOXERS NIGHT.118 結果・戦評】印波優心が山口友士を1回TKO

2026年9月11日、後楽園ホールで開催された「OVER HEAT BOXERS NIGHT.118」。

メインイベントでは、日本バンタム級15位の印波優心選手が同級10位の山口友士選手と対戦しました。印波選手が1ラウンドにダウンを奪い、2分24秒TKOでランカー対決を制しています。

セミファイナルでは、柿元蓮選手が川口竜也選手からダウンを奪われながらも、残りのラウンドで着実にポイントを重ねて判定勝ち。そのほか、南雲流唯瑞選手と矢野円来選手の接戦など、距離の取り方や打ち終わりの対応が結果を分ける試合が続きました。

個人的に、今回の興行で最もボクシングのレベルが高いと感じたのは、保谷勇次選手vs藤澤孟則選手です。ジャブの差し合い、オーソドックスとサウスポーの位置取り、攻撃後のリターンまで、互いに簡単には崩れない技術戦。判定は引き分けでしたが、見応えのある6ラウンドでした。

ここからは全8試合の結果とともに、勝敗を分けたと感じた攻防を振り返ります。

※以下の試合内容と技術的な評価は、配信映像を視聴した筆者個人の分析です。選手や陣営の意図を断定するものではありません。

目次

OVER HEAT BOXERS NIGHT.118の開催概要

項目内容
興行名OVER HEAT BOXERS NIGHT.118
開催日2026年9月11日(金)
会場後楽園ホール
プロモーターフラッシュ赤羽
実施試合数全8試合
配信BOXING RAISE

予定されていた51.5kg契約4回戦、下山真己選手(フラッシュ赤羽)vs河村政人選手(レイスポーツ)は、河村選手の棄権により中止。実施されたのは全8試合です。

4回戦・6回戦・8回戦で戦い方がどう変わるのかは、以下の記事で詳しく解説しています。

ボクシングの4回戦・6回戦・8回戦は何が違う?

全8試合の結果一覧

試合対戦カード結果
バンタム級8回戦山口友士 vs 印波優心印波が1R2分24秒 TKO勝ち
Sバンタム級8回戦柿元蓮 vs 川口竜也柿元が判定3-0(77-74×2、78-73)
Sバンタム級6回戦南雲流唯瑞 vs 矢野円来南雲が判定2-1(57-56×3)
フライ級6回戦矢作海 vs 千野竜矢千野が6R1分52秒 TKO勝ち
Sフェザー級6回戦保谷勇次 vs 藤澤孟則引き分け(57-57×2、58-56保谷)
63.0kg契約4回戦中村幹 vs シャオリン孝司シャオリンが1R1分51秒 TKO勝ち
64.0kg契約4回戦猪爪優人 vs 松村直樹松村が判定3-0(39-37、40-36×2)
71.0kg契約4回戦山田健太郎 vs 北村メビウス幸弘北村が1R1分12秒 TKO勝ち

印波優心vs山口友士|頭が上がる瞬間を逃さず1回TKO

結果:印波優心が1R2分24秒 TKO勝ち

序盤はともにジャブを出しながら距離を探る展開。山口友士選手が足を使って距離を取るのに対し、印波優心選手はワンツーを見せながら前へ出て、少しずつ圧力を強めます。

決着につながったのは、山口選手の頭の位置が変わる瞬間です。

印波選手のストレートに対して山口選手が上体を沈め、その頭が上がってくるところへフックからストレート。ここで最初のダウンを奪いました。立ち上がった山口選手の足元には、明らかなダメージが残ります。

山口選手がクリンチでしのごうとしたところへ、印波選手が連打。再び倒れたところでレフェリーストップとなりました。

元プロとして注目したポイント

印波選手は、単に前へ出て強いパンチを振ったわけではありません。見ていたのは、山口選手がパンチを避けたあとの姿勢。頭が元の位置へ戻るタイミングに攻撃を合わせています。

ダッキングで最初のパンチを外しても、同じ場所へ頭を戻せば次のパンチを狙われる。その一瞬を逃さず、最初のダウンから決着まで攻撃を途切れさせなかった印波選手。狙いと仕留め方がかみ合ったTKOでした。

柿元蓮vs川口竜也|ダウン後も崩れず、小さな動きでポイントを回収

結果:柿元蓮が判定3-0(77-74×2、78-73)で勝利

1ラウンドは、柿元蓮選手が中間距離から細かくパンチを当てる展開。大きく踏み込むわけではなく、予備動作の少ない右ストレートやボディーアッパーを重ね、川口竜也選手に攻撃の起点をつくらせません。

2ラウンド終了間際、試合が動きます。柿元選手が左フックを打った際にガードが開き、川口選手が右フックを返してダウンを奪取。柿元選手にとっては痛い失点。それでも、その後のボクシングは崩れません。

柿元選手は大きな動きで目立つタイプではないものの、気づけばパンチの届く位置まで入っています。遠い距離から自然に間合いを縮め、力みの少ない右ストレートを正面へ通す。この距離の詰め方が川口選手を悩ませました。

川口選手も後半は距離が合い始め、7ラウンドには連打で柿元選手を後退させます。接近戦で見せた回転の速いコンビネーション。ただ、柿元選手も右ショートやボディーを返し、主導権を渡しませんでした。

元プロとして注目したポイント

一度のダウンだけでは8回戦の勝敗は決まらない。それがよく表れた試合です。

川口選手が奪ったダウンは明確でした。しかし、柿元選手は残りのラウンドで予備動作の少ないパンチを着実に当て続けます。派手な攻撃ではなく、小さなステップと正確な有効打の積み重ね。それが最終的なポイント差につながったと考えます。

川口選手は接近戦で持ち味を出しただけに、柿元選手が距離を縮める前にジャブで止められれば、さらに自分の攻撃時間を増やせたはずです。

南雲流唯瑞vs矢野円来|打ち終わりのリターンとダウンが接戦を分けた

結果:南雲流唯瑞が判定2-1(57-56×3)で勝利

サウスポーの南雲流唯瑞選手と、オーソドックスの矢野円来選手による6回戦。

序盤は互いにフットワークを使い、ジャブとストレートで距離を探ります。矢野選手はボディーストレートやフェイントを交え、南雲選手は右フックから距離を詰める。簡単には正面へ立たない攻防が続きました。

2ラウンド、矢野選手がボディーストレートからフックへつなぎ、ロープ際でラッシュ。しかし南雲選手は攻撃を耐えると、体を入れ替えて今度は矢野選手をロープへ詰めます。そこから連打をまとめ、ダウンを奪いました。

矢野選手は自分のパンチを当てる場面をつくった一方、その直後にリターンを受ける場面も目立ちます。南雲選手も打ち返す前にパンチを受けており、どちらかが完全に主導権を握った試合ではありません。

判定は3者とも57-56。1者が矢野選手、2者が南雲選手を支持する僅差でした。

元プロとして注目したポイント

技術的な攻防だけを見れば、矢野選手がパンチを当てていたラウンドもありました。だからこそ大きかった、2ラウンドのダウン。最終結果を左右した場面だったと考えます。

矢野選手は攻撃を当てたあと、その位置に残ったところへリターンを受けました。打ったあとに頭の位置を変える、角度をつけて外へ出る。そうした動きが加われば、余計な被弾を減らせそうです。

南雲選手は、遠い位置から届かせる左ストレートと、右フックから入る動きが印象的でした。顔面だけでなくボディーへ攻撃を散らせるか。今後の攻撃の幅を広げるポイントになりそうです。

ボクシングの採点基準|判定5連敗を経験した元A級プロが解説

千野竜矢vs矢作海|長いワンツーでダウンを奪い、最終回TKO

結果:千野竜矢が6R1分52秒 TKO勝ち

上背のある千野竜矢選手が中間距離を保ち、矢作海選手が重心を低くして懐へ入ろうとする構図。

千野選手はガードを高く保ち、長く切れるジャブからワンツーを組み立てます。矢作選手は接近戦へ持ち込みたいものの、直線的に入ったところへジャブを受ける場面が目立ちました。

それでも3ラウンド途中から矢作選手が圧力を強め、千野選手にガードを固めさせます。前へ出る矢作選手と、足を使いながら迎え撃つ千野選手。スタイルの違いが、見た目の主導権にも影響する展開です。

4ラウンド、矢作選手が距離を外した際にガードを下げたところへ、千野選手のワンツーが入りダウン。矢作選手が攻勢を強めていた時間帯だけに、痛い失点となりました。

5ラウンドには矢作選手がサウスポーへスイッチ。ただ、千野選手の長い距離を崩すまでには至りません。最終6ラウンド、1分52秒で千野選手のTKO勝ちとなりました。

元プロとして注目したポイント

千野選手は、矢作選手の変則的な動きへ不用意に付き合わず、ジャブとワンツーを中心に自分の距離を守りました。相手が前へ出てきても近い距離に長く残らず、ガードを固める。派手さよりも安定感が光るボクシングでした。

一方の矢作選手は、低い姿勢から入る動きと後半の圧力が持ち味。ただ、攻撃へ転じる際にガードが大きく開き、不用意なパンチを受けていました。踏み込むときに頭の位置をずらすことに加え、打ち終わりにガードを戻す意識も必要です。大きく振ったあとに体が流れる場面もあったため、攻撃後のバランスが整えば、接近戦の強みをさらに生かせると感じます。

保谷勇次vs藤澤孟則|今回の興行で最もレベルが高かった技術戦

結果:引き分け(57-57×2、58-56保谷)

オーソドックスの保谷勇次選手と、サウスポーの藤澤孟則選手による6回戦。今回の興行で、個人的に最もボクシングのレベルが高いと感じた一戦です。

初回は、互いにステップを踏みながらジャブで距離を確認。両者ともジャブの切れがよく、藤澤選手は速い左ストレートを合わせようとします。実際にパンチが届く位置を巡る、静かながら緊張感のある立ち上がりでした。

2ラウンド以降、保谷選手は遠い位置から深く踏み込むジャブを増やします。ジャブで距離を把握し、顔面への右ストレートとボディーストレートを打ち分ける。藤澤選手の反撃にはバックステップで対応しました。

藤澤選手も距離が詰まると、左のボディーアッパーやボディーフックで応戦。終盤には左ボディーが保谷選手を捉え、腹を気にするように見える場面もありました。

最終ラウンドは藤澤選手が積極的に前へ出たものの、保谷選手もジャブとストレートで応戦。判定は57-57が2者、58-56で保谷選手が1者となり、引き分けでした。

元プロとして注目したポイント

個人的には、ジャブで距離を先に把握し、打ったあとも位置を外していた保谷選手がわずかに上回ったように見えました。一方、藤澤選手もボディーで明確な場面をつくっています。接戦のラウンドもあり、引き分けという結果に違和感はありません。

保谷選手は普段は正面を外し、パンチを打つ瞬間だけ踏み込んでいました。打つときと守るときで立ち位置を変え、サウスポーの左ストレートを正面から受けない工夫。藤澤選手も複数の角度から右ジャブを出し、距離が詰まれば左のボディーへつなげます。

互いの攻撃に対してすぐリターンを返し、それをさらに足とガードで外す。単発の有効打だけではなく、その前後の攻防まで含めて完成度が高く、今回の興行で最も印象に残った技術戦でした。

シャオリン孝司vs中村幹|予備動作の少ないジャブから右フック

結果:シャオリン孝司が1R1分51秒 TKO勝ち

シャオリン孝司選手は、開始から予備動作の少ないジャブで距離をつかみます。ジャブを打ったあともガードが下がらず、すぐにバックステップ。攻撃した位置に残りません。

中村幹選手も接近戦では、ボディーから顔面へ回転力のあるパンチを返しました。しかし、距離を詰めて連打を出す際にガードが開き、その隙へシャオリン選手のパンチが入ります。

シャオリン選手はジャブで中間距離を保ち、右フックやボディーへ展開。最後は右フックが中村選手を捉え、レフェリーが試合を止めました。

元プロとして注目したポイント

シャオリン選手のジャブは、強く打ち込むだけではありません。軽く触れて距離を測る役割も果たしていました。

「打ったら動く、動いたら打つ」の徹底。ジャブを出したときも反対の手が顔から離れず、攻撃と守備が切れないままつながっています。1分51秒という短い試合の中に、基本動作の完成度が表れた勝利でした。

猪爪優人vs松村直樹|左の使い分けとフットワークで主導権

結果:松村直樹が判定3-0(39-37、40-36×2)で勝利

序盤は互いにリードの手を触りながら距離を探ります。松村直樹選手はフットワークを使い、ジャブだけでなく左フックやボディーストレートなど、複数の軌道から攻撃しました。

猪爪優人選手は前へ出ようとしたものの、松村選手のフェイントへ反応させられ、後手に回る時間が長くなります。松村選手が先に動き、猪爪選手がそれに反応する流れでした。

2ラウンドには、打ち合いの中で松村選手が回転力の差を見せます。右の打ち下ろしを受け、ふらついた猪爪選手。ゴングまで耐えたものの、その後も松村選手が足と手数で試合を進めました。

元プロとして注目したポイント

松村選手はハイガードを保ちながら、上下へのフェイントとボディーストレートを起点に距離を縮めます。軽い前後の動きと、顔の周りから崩れないガード。猪爪選手の大きなパンチをまともに受けませんでした。

判定では大差がつきましたが、松村選手にはKOへつなげられる余地もあったように見えます。顔面へのジャブとストレートに加え、左ボディーから左フックへ返すなど、腹への攻撃を増やせば、ガードをさらに崩せたのではないでしょうか。

猪爪選手は重心が後ろ足側に残り、前へ踏み込むパンチが伸びにくくなる場面がありました。さらに、攻撃へ転じる際にガードが大きく開き、不用意な被弾につながっています。特にリードを出したあと、右手を顔へ戻すまでが遅い。攻撃を始める位置とガードの戻しが整えば、持っているパンチを当てる機会も増えるはずです。

山田健太郎vs北村メビウス幸弘|大きな攻撃へ冷静にカウンター

結果:北村メビウス幸弘が1R1分12秒 TKO勝ち

山田健太郎選手が初回から先手を取り、強いパンチを振りながら前進。北村メビウス幸弘選手はその勢いに付き合わず、速いジャブを突きながら山田選手の動きを見ます。

最初のダウンは、山田選手が大きくフックを振ったところへ、北村選手が左フックを合わせた場面でした。

再開後も北村選手はジャブで距離を取り、山田選手の打ち終わりへ右ストレート。よろけたところをワンツーで追い、倒れたところでレフェリーストップとなりました。

元プロとして注目したポイント

わずか1分12秒の中で光った、北村選手の冷静さ。

山田選手が先に攻めても、北村選手は慌てて打ち合わず、ジャブで距離を確認しています。大きく振ったパンチには左フック、打ち終わりには右ストレート。相手の攻撃に応じて狙いを変えていました。

4回戦では、一度のダウンが試合を大きく動かします。最初のチャンスを逃さず、そのまま決着まで持ち込んだ北村選手。短期決戦で必要な判断の速さが表れた勝利です。

BOXING RAISEで実際の攻防を確認する

本興行はBOXING RAISEでライブ配信されました。アーカイブ配信の有無や現在の公開状況は、公式サイトで確認できます。

OVER HEAT BOXERS NIGHT.118の配信ページを確認する

まとめ|距離だけでなく、打ったあとの位置が勝敗を分けた

OVER HEAT BOXERS NIGHT.118は、8試合中4試合がTKO決着。

特に印象に残ったのは、次の4点です。

  • 保谷勇次選手と藤澤孟則選手が見せた、ジャブと位置取りを巡る高度な攻防
  • 印波優心選手が、相手の頭が上がるタイミングを捉えたこと
  • 柿元蓮選手が、ダウン後も崩れず残りのラウンドを積み重ねたこと
  • 矢作海選手と猪爪優人選手が、攻撃時にガードを開けたところで被弾したこと

パンチを当てることだけでなく、打ったあとにどこへ頭と体を置くのか。距離を外したつもりでも、ガードを下げてよい位置なのか。攻撃後のわずかな隙が、ダウンや決着へ直結した興行でした。

その中でも、保谷勇次選手と藤澤孟則選手の一戦は別格でした。互いのジャブと位置取りがかみ合い、攻撃を受けてもすぐにリターンを返す。今回の興行で、最もボクシングのレベルが高いと感じた試合です。

世界戦やタイトルマッチだけでなく、4回戦から8回戦にも、選手ごとの武器と今後の課題が見えます。結果だけでは分からない攻防を追う。それも国内興行を見る面白さです。

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この記事を書いた人

元A級プロボクサー。26歳のとき、会社員として働きながらダイエットを目的にボクシングを始め、28歳でプロライセンスを取得。29歳でデビューし、37歳を目前に引退した。プロ通算戦績は15戦5勝8敗2分。

本業では、企業オウンドメディアのYouTubeスポーツ番組でディレクターを務める。RING LIVERARYでは、自身のリング経験とコンテンツ制作の知見をもとに、主に後楽園ホールで行われる国内興行の試合結果・戦評や注目選手の解説を発信。結果だけでなく、勝敗を分けたポイントや技術的な見どころまで、元プロの視点から掘り下げています。

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