9月18日、後楽園ホールで第83回東日本新人王トーナメント準決勝の2日目が行われた。実施された10試合では、初回のダウンを取り返した林兼士、開始22秒で試合を決めた井野慶信、接戦を制した當山楓真らが決勝へ進んだ。
この日は、前に出る選手と距離を保ちたい選手の攻防が随所に見られた。筆者が特に注目したのは、林の逆転につながった足と上体の動き、當山の打ち終わりへの返し、尾上剣清の距離管理だ。全10試合の結果と、勝敗を分けた場面を振り返る。
9月18日・全10試合の結果
| 階級 | 対戦 | 結果 |
|---|---|---|
| ミニマム級 | 林兼士 vs 大畑連汰 | 林が4回1分56秒、レフェリーストップ勝ち |
| ライトフライ級 | 和田武士 vs 當山楓真 | 當山が2-0判定勝ち(39-37、39-37、38-38) |
| フライ級 | 井野慶信 vs 丸山孔明 | 井野が1回22秒、レフェリーストップ勝ち |
| スーパーフライ級 | 髙森悠叶 vs 越前屋亮 | 髙森が3-0判定勝ち(39-37×3) |
| バンタム級 | 江﨑由 vs 青木裕仁 | 江﨑が1回45秒TKO勝ち |
| スーパーバンタム級 | 松本龍也 vs 西本剛 | 38-38の引き分け。優勢点で西本が決勝進出(39-37松本、39-37西本、38-38) |
| フェザー級 | 福山弘樹 vs 江田葵一 | 1回29秒、偶然のバッティングによるテクニカルドロー。負傷していない福山が決勝進出 |
| スーパーフェザー級 | 保木井樹 vs 尾上剣清 | 尾上が4回52秒KO勝ち |
| スーパーライト級 | 程子浩 vs 磯谷広太 | 磯谷が3-0判定勝ち(38-37×3) |
| ウェルター級 | 杉本鉄尚 vs 福田哲史 | 杉本が3-0判定勝ち(39-37×3) |
※結果と採点は当日の視聴メモに基づく。選手名・対戦カードはJBCの試合組合せに合わせた表記。
林兼士vs大畑連汰|初回のダウンから、足と上体の動きで逆転
結果:林が4回1分56秒、レフェリーストップ勝ち
林は1回、大畑の正面に入ったところでワンツーを受け、ダウンを喫した。ポジションを取り合うなか、一瞬正面に立ったことが被弾につながったように見えた。
それでも、ダウン後に攻め手を失わなかった。上体を動かして大畑のパンチを外し、足も止めずに距離を詰めたり離したりする。頭を下げて避けた後も正面に残らず、位置を変えてパンチを返した。上下への打ち分けもあり、2回以降は大畑が自分の距離をつくりにくくなった印象だ。
4回は大畑のパンチをかいくぐって左のボディアッパーを入れ、動きを見ながら連打へ。右フックを受けた大畑が崩れ、レフェリーが試合を止めた。逆転を支えたのは、一発の威力だけではない。避けた後に足を動かし、打てる位置をつくり直したことだ。決勝では、初回に許したような正面での被弾をどこまで減らせるか。
和田武士vs當山楓真|接近戦の中で差をつけた返しの的確さ
結果:當山が2-0判定勝ち(39-37、39-37、38-38)
互いにガードを固め、接近戦でパンチを交換した。和田は押し込みながら攻撃を続け、當山もブロックして終わらず、アッパーやフックを返す。手数とスタミナを要する展開のなか、両者とも最後まで打ち続けた。
接近戦だけなら優劣はつけにくい。ただ、打ち終わりへの返しでは當山のパンチがやや的確に映った。顔だけでなくボディにも散らし、距離が少し開けばストレートを伸ばす。和田が1発打った後に、當山が2発、3発と返す場面もあった。ブロックするときも上体を使って衝撃をいなし、押し込まれたら体を入れ替える。接近戦の粘りに、中間距離での選択肢を加えた當山が判定をものにした。
井野慶信vs丸山孔明|左アッパーから始まった22秒の決着
結果:井野が1回22秒、レフェリーストップ勝ち
開始直後は丸山が仕掛けたが、井野は持ちこたえて自分の距離を取った。そこから左アッパーをガードの間に通し、右ストレートをつなぐ。丸山の動きが止まったところで連打をまとめ、レフェリーが止めた。1回22秒の決着。
ジャブで仕切り直す代わりに、いきなり左アッパーでガードの内側を狙った選択が光る。試合時間は短く、長いラウンドでの組み立てまで評価する材料はない。それでも、効かせてから落ち着いてまとめた場面には決勝への期待が残った。
髙森悠叶vs越前屋亮|前進した髙森が3-0判定勝ち
結果:髙森が3-0判定勝ち(39-37×3)
序盤からストレートを打ち合い、距離が縮まれば接近戦へ。越前屋は前後左右に動きながらパンチを出し、筆者には互角に近い試合に映った。一方、髙森は前へ出ながらストレートやフックを打ち込む。その攻撃が3者の採点につながり、39-37が3枚で髙森が勝った。
どのラウンドをどちらに取るかは、有効打の見え方で分かれうる。筆者はもう少し競った採点も考えたが、ジャッジが個々のパンチをどう評価したかまでは分からない。髙森の前進と、距離を変えて打った越前屋。それぞれの持ち味が出た一戦だった。
江﨑由vs青木裕仁|正面を捉えた左ストレート
結果:江﨑が1回45秒TKO勝ち
江﨑は開始から切れのあるジャブ、ストレート、ボディへの攻撃を見せた。青木が距離を詰めて正面に入ったところに左ストレートを当て、ダウンを奪う。再開後も青木が江﨑の正面に残る時間があり、ストレートを重ねて1回45秒で止めた。
江﨑のパンチには速さがあり、顔とボディで攻撃のリズムも変えていた。青木は最初のダウン後、ガードを固めるだけでなく横へ位置を変えられれば、正面から続けて打たれる展開を避けられたかもしれない。江﨑が短時間でその隙を逃さなかった。
松本龍也vs西本剛|判定は三者三様、西本が優勢点で進出
結果:38-38の引き分け。優勢点で西本が決勝進出(39-37松本、39-37西本、38-38)
松本が立ち上がりから攻めた一方、2回以降は西本のストレートが当たり始めた。西本は前足を松本の前足の外に置き、打ちやすい位置を確保。オーソドックスとサウスポーの対戦で、その位置取りが直線的なパンチの通り道をつくったように見えた。
筆者には、西本のパンチの切れと的確さが目立ち、ぐらつかせる場面もあった。採点は39-37で両者に1枚ずつ、残る1枚は38-38。規定による優勢点で西本が決勝に進んだ。筆者の見方より接戦の採点だったが、松本を支持したジャッジがどの場面を評価したかは採点表だけでは判断できない。
福山弘樹vs江田葵一|偶然のバッティングで試合終了
結果:1回29秒、偶然のバッティングによるテクニカルドロー。負傷していない福山が決勝進出
5回戦で組まれた一戦は、開始から間もなく、接近した場面で頭が当たり、江田が左目の上を負傷した。続行できず、1回29秒でテクニカルドロー。負傷していない福山が決勝へ進む。
攻防が形になる前に終わっただけに、両者の力関係をこの試合から論じることはできない。江田にとって悔やまれる結末となり、福山は決勝で改めてそのボクシングを見せることになる。
保木井樹vs尾上剣清|前進を外し続けた尾上の右カウンター
結果:尾上が4回52秒KO勝ち
保木井は頭を動かしながら前へ出て、接近戦へ持ち込もうとした。尾上は下がりながらもボディと顔へパンチを返し、入ってくる相手にカウンターを合わせる。3回には保木井の負傷でドクターチェックが入り、その後も保木井は前進を強めた。
尾上は足を止めて打ち合う場面を増やさず、バックステップで距離をつくり直した。4回、踏み込んできた保木井へ右ストレートを合わせてダウンを奪い、4回52秒KO勝ち。前に出続ける相手を4回にわたってさばき、自分の得意な距離で最後の一撃を当てた。技術だけでなく、足を動かし続けたスタミナも印象に残る。
程子浩vs磯谷広太|ダウン後も自分の距離を保った磯谷
結果:磯谷が3-0判定勝ち(38-37×3)
程は力強いパンチを振り、磯谷はガードの隙間を通すシャープな直線のパンチで応じた。2回、接近戦から離れる際に程の左フックを受け、磯谷がダウン。それでも集中を切らさず、距離を整えてワンツーや返しのジャブを打ち込んだ。
力強く攻める程に対し、磯谷はパンチを受けた後も間合いを崩さず、自分の形へ戻した。38-37が3枚の判定勝ち。ダウンの失点を取り返した対応力が決勝への切符につながった。
杉本鉄尚vs福田哲史|杉本が初戦を判定で突破
結果:杉本が3-0判定勝ち(39-37×3)
デビュー戦の杉本は、ジャブとストレートを軸に前半から攻めた。福田はガードや上体の動きで直撃を避け、ジャブへの右カウンターも狙う。後半は杉本の攻撃がやや落ち着き、福田の手数と対応が目立つ時間もあった。
採点は39-37が3枚で杉本。初戦を白星で飾ったが、顔へのパンチが中心だっただけに、決勝ではボディも交えた組み立てを見たい。敗れた福田も、後半に見せた粘りは印象的だった。杉本のジャブを受ける場面があったため、守備を整えながら続けてほしい。
まとめ|決勝で見たいのは、それぞれの「次の対応」
林はダウン後に動きを変えず逆転し、尾上は前進する相手を自分の距離でさばき続けた。當山は打ち終わりへの返しで競り勝ち、磯谷はダウンの失点を取り返した。勝った選手にも、決勝へ向けて確かめたい課題がある。林の序盤の位置取り、杉本の上下の組み立て、西本の接戦でのポイントの取り方。次戦では、今日見えた強みと課題がどう変わるかに注目したい。
9月17日の結果・戦評は、前日の記事にまとめている。


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