2026年8月19日、東京・後楽園ホールで「PHOENIX BATTLE 159(フェニックスバトル159)」が開催された。
メインではWBOアジアパシフィック・ライト級王者の宇津木秀と、無敗の挑戦者・髙橋麗斗が対戦。そのほかにもOPBFタイトルマッチ3試合、田中空の再起戦、アマ7冠・中山聖也のプロデビュー戦が行われた。
試合結果そのものは、すでに多くの媒体で報じられている。
そこで本記事ではラウンドごとの攻防を細かくなぞるのではなく、Leminoで全6試合をフル視聴したうえで、筆者が感じた勝敗を分けたポイントや印象に残った技術を中心に振り返る。
※以下の戦評には筆者個人の見解を含みます。
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PHOENIX BATTLE 159 試合結果一覧
| 対戦カード | 結果 |
|---|---|
| 宇津木秀 vs 髙橋麗斗 | 髙橋麗斗 7R 2分40秒 KO勝ち |
| 田中空 vs レイモンド・ヤノング | 田中空 1R 1分31秒 TKO勝ち |
| 岡聖 vs 中山慧大 | 中山慧大 5R 1分58秒 TKO勝ち |
| 中山聖也 vs ナッタポン・ジャンケーウ | 中山聖也 6R 52秒 TKO勝ち |
| 吉田京太郎 vs 韓亮昊 | 韓亮昊 2-0 判定勝ち |
| 北野武郎 vs エルソン・トリニダード | 北野武郎 3-0 判定勝ち |
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宇津木秀vs髙橋麗斗|WBO-APライト級タイトルマッチ
結果:髙橋麗斗 7R 2分40秒 KO勝ち
最後は髙橋麗斗の左ストレートによる鮮烈なKO決着。
ただ、筆者がこの試合で特にポイントだったと感じたのは、フィニッシュブローよりも髙橋のアッパーだった。
宇津木は距離を詰めてコンパクトなパンチやボディをまとめるのがうまい。髙橋としては、宇津木に気持ちよく懐へ入らせたくない。
そこで効果的だったのが、宇津木の入り際を狙ったアッパーだ。
実際にクリーンヒットする場面があり、筆者には宇津木も一定のダメージを負ったように見えた。
もちろん映像だけでダメージの程度までは断定できない。
それでも、一度強いアッパーをもらえば、その後は同じ入り方をする際にどうしても警戒が生まれる。
「入ってくるならアッパーがある」と宇津木に意識させたこと自体が、髙橋にとってかなり大きかったのではないか。
さらに良かったのは、宇津木との接近戦に付き合い続けなかったこと。
宇津木に距離を詰められても、一度間合いを作り直し、左ボディストレートなどを使いながら再び自分の距離へ戻そうとしていた。
勝敗を分けたのは「侵入させないためのアッパー」
筆者は、髙橋の勝因を単純なパンチ力だけとは見ていない。
宇津木の入り際にアッパーを合わせることで侵入を警戒させ、接近戦になっても必要以上に付き合わず距離を作り直す。
その積み重ねによって、髙橋が持つ左の強打を生かせる状況を最後まで残せたように感じる。
プロキャリアでは宇津木の方が圧倒的に長い。
その相手に対して、ただ勢いで打ち勝ったのではなく、自分が不利になりそうな展開を一度リセットできていたことは高く評価したい。
最後は左ストレートでKO。
宇津木という国内ライト級トップクラスの選手を倒した結果はもちろん大きいが、個人的には「強打のホープ」というだけではない髙橋の一面が見えた試合だった。
今後、さらに上のレベルでどんなボクシングを見せるのか楽しみだ。
岡聖vs中山慧大|OPBFバンタム級王座決定戦
結果:中山慧大 5R 1分58秒 TKO勝ち
中山慧大がデビューから5戦連続KO勝利でOPBF王座を獲得した。
5戦5KOという数字だけを見ると、どうしてもパンチ力に目が向く。
ただ、今回の試合で筆者が印象に残ったのは、岡聖のガードに対する中山の右の使い方だった。
中山が使っていたのは、真っすぐ正面から打ち抜く一般的な右ストレートとは少し違う。
右フックのようにやや外側から入りながら、上から打ち下ろすような軌道で岡のガードの横を通し、顔面を狙う。
この右がかなり効果的に見えた。
岡はガードを固めていたが、中山はそのガードを正面から力任せに壊そうとするのではなく、ガードの外側からパンチを通すルートを作っていた。
ここが面白かった。
さらに中山は、その右だけに頼らない。
ジャブ、左フック、アッパー、ボディとパンチを散らし、一発当てたところから次の攻撃へつなげていく。
5戦5KO以上に感じた「崩し方」のうまさ
個人的には、中山の強さは「一発が強い」だけではないと思う。
相手がガードを固めれば横から狙う。
意識が上に集まればボディへ散らす。
そして一発が入れば、そこで終わらず次のパンチへつなげる。
相手の守り方を見ながら、打つ場所や軌道を変えられる。
これが岡との差になったように見えた。
逆に岡は、中山の圧力を跳ね返そうとするあまり強振する場面も増え、徐々に自分のパンチを当てる形を作れなくなっていった印象がある。
最後も中山が複数のパンチをまとめてストップを呼び込んだ。
5戦5KOでOPBF王座獲得。
派手な数字ではあるが、筆者としてはKO率以上に、すでに相手を崩すための引き出しを持っていることに魅力を感じた。
今後、さらにレベルの高い相手が簡単には前へ出させてくれなくなったとき、中山がどう対応するのかも見てみたい。
吉田京太郎vs韓亮昊|OPBFスーパーフライ級タイトルマッチ
結果:韓亮昊 2-0判定勝ち(96-94、96-94、95-95)
公式採点は2-0。
数字だけを見ると、かなり接戦だったように感じる。
ただ、筆者には採点ほど競った試合には見えなかった。
採点表をつけながら見ていたわけではないので「何対何だった」とまでは言わないが、映像を通して見た印象では、公式採点よりもう少し韓亮昊がポイントを取っていたように思う。
韓は序盤から積極的に左を打ち込み、手数でも先行。
何より、韓が先に仕掛けて吉田に対応させる時間が長かった。
吉田も右を上下に散らし、左フックやボディを使って中盤以降に巻き返す。
特にボディは韓のスタミナを削る意味でも効果があったように見えた。
それでも、筆者には前半につけられた差を完全に取り返したところまでは見えなかった。
2-0判定以上に韓が試合を握っていた印象
吉田が後半に盛り返したことで、試合としては最後まで勝負になった。
ただ、「後半に吉田が良かった」ことと「10ラウンド全体でどちらが取ったか」は分けて考えたい。
韓は前半から積極性を出し、有効打だけでなく試合の主導権でも先行していた。
吉田にも良い時間帯はあったが、それによって韓が積み上げたポイントが帳消しになるほどではなかったというのが筆者の見立てだ。
公式には96-94が2者、95-95が1者。
ジャッジによって見方が分かれるのは当然だが、個人的には**「僅差で韓」というより、「吉田も巻き返したが全体として韓が一枚上回った」**という印象だった。
北野武郎vsエルソン・トリニダード|OPBFミニマム級王座決定戦
結果:北野武郎 3-0判定勝ち(100-90、100-90、99-91)
採点は北野武郎の大差勝利。
勝者について異論はない。
北野はトリニダードのパンチがよく見えており、距離感も安定していた。
相手が踏み込んできてもバックステップなどで外し、打ち終わりのリターンにも警戒できている。
ジャブや左ストレートも要所で当たり、ポイントを取る技術では北野が明確に上回っていたと思う。
ただ、筆者としては試合内容にはかなり物足りなさも残った。
大差判定といっても、各ラウンドを10-9で積み重ねればスコアは大きく開く。
実際のリング上で、それだけ大きなダメージ差や攻撃力の差を感じたかというと、筆者にはそこまでではなかった。
理由は北野の攻撃が単発で終わる場面の多さだ。
ジャブが当たってもそこで終了。
左ストレートが当たっても、次につながらない。
「そこからもう一発、二発まとめれば相手を崩せるのに」と感じる場面が何度もあった。
「アクション」より「リアクション」のボクシング
特に中盤以降、筆者には北野が自分から展開を作る「アクション」のボクシングというより、トリニダードが動いたところに合わせる「リアクション」のボクシングになっているように見えた。
トリニダードは距離がやや遠く、踏み込む際の初動も大きい。
北野もそれを読めていたため、大きなパンチをもらう危険性は低かった。
だからこそ、もう少し自分から試合を動かしてもよかったのではないか。
ストレートだけでなくボディストレートで上下に散らす。
ジャブが当たった後にフックまでつなぐ。
トリニダードのスタミナが落ち始めた終盤には、少し圧力を強めてみる。
そうした変化があれば、試合内容はかなり違ったはずだ。
もちろんタイトルマッチで、不必要なリスクを負って打ち合う必要はない。
北野が相手のカウンターを警戒していたことも考えられる。
それでも、相手のパンチをこれだけ見切れていたからこそ、もう一段攻撃面で踏み込んでほしかった。
王座獲得は評価。ただ、ここから先に期待したい
北野は2023年度東日本新人王を獲得し、一つずつキャリアを積み上げてOPBF王座までたどり着いた叩き上げの選手だ。
そういう選手だからこそ、筆者としては今後さらに上へ行ってほしいと思っている。
距離を管理する力があり、相手の攻撃もしっかり見えている。
今回の試合で、その土台は十分に確認できた。
次に見たいのは、相手を見切ったあとに、自分から崩しにいく北野武郎だ。
王座獲得という結果は素晴らしい。
一方で、今回をゴールではなく、さらに上のレベルへ進むためのスタートにしてほしい。
その他の注目試合
田中空vsレイモンド・ヤノング|91秒TKOで再起
結果:田中空 1R 1分31秒 TKO勝ち
田中空は左アッパーや左ボディでヤノングを後退させ、最後も左ボディで試合を終わらせた。
前戦でプロ初黒星を喫した後の再起戦としては、結果だけを見れば申し分ない。
ただ、試合時間はわずか91秒。
筆者としては、この試合だけで「田中が前戦からどう変わったのか」まで評価するのは難しい。
一方で、相手にダメージがあると見ると一気に仕留めにいく決定力は健在だった。
むしろ次に見たいのは、序盤で倒せない相手と戦ったときの田中だ。
長いラウンドの中で相手に対応され、展開を変える必要が出てきたときに何を見せるのか。
田中の能力を考えれば、その部分に注目したい。
中山聖也vsナッタポン・ジャンケーウ|デビュー戦で得た6ラウンドの経験
結果:中山聖也 6R 52秒 TKO勝ち
アマチュア7冠の中山聖也がプロデビュー戦をTKO勝利で飾った。
中山はサウスポーから長い右ジャブと左ストレートを軸に攻撃。
3R、5Rにダウンを奪い、最後は6Rにストップまで持ち込んだ。
この試合で個人的に良かったと思うのは、早いラウンドで簡単に終わらなかったことだ。
ナッタポンは上体を柔らかく使いながらクリーンヒットを外し、簡単には倒れてくれない。
アマチュアで実績を残した選手がプロへ転向すると、どうしてもデビュー戦から派手なKOを期待される。
ただ、今後を考えれば、「倒せそうで倒せない相手をどう追うか」という時間を経験できたことにも価値がある。
ダウンを奪っても焦らず、最終的には6Rで仕留めた。
1Rや2RのKO勝利より、プロとしては収穫のあるデビュー戦だったのではないか。
今後、国内上位クラスと戦ったときに、長い右ジャブと左ストレートをどこまで武器にできるのか注目したい。
PHOENIX BATTLE 159を見て感じたこと
今回のPHOENIX BATTLE 159で、筆者が最も印象に残ったのは髙橋麗斗だった。
宇津木秀をKOしたという結果はもちろん大きい。
ただ、それ以上に評価したいのは、宇津木が得意とする接近戦へ入る際にアッパーを意識させ、自分が不利になりそうな局面では距離を作り直していたこと。
単純なパンチ力だけではない部分を見せた。
中山慧大も面白い。
5戦5KOという数字以上に、岡のガードの横を狙った右や上下への打ち分けなど、相手をどう崩すかを考えながら攻撃しているように見えたことに強さを感じた。
韓亮昊については、公式判定以上に試合を握っていたというのが筆者の見立て。
逆に北野武郎は王座を獲得したものの、攻撃の連続性という点では今後への課題も感じた。
結果だけを並べれば、新王者が次々に誕生した興行だった。
しかし全試合を通して見ると、勝者の中にも今後さらに見たい部分があり、数字だけでは分からない強みや課題が見えてくる。
速報ではなく試合後に映像を見返して戦評を書くからこそ、RING LIVERARYでは今後も「誰が勝ったか」だけではなく、「なぜそうなったのか」を追っていきたい。
大橋ボクシングジム主催のPHOENIX BATTLEはLeminoで配信されています。
RING LIVERARYでは今後もPHOENIX BATTLEの注目カードを戦評していく予定です。Leminoプレミアムの料金や登録・解約方法、ボクシング配信については以下の記事で詳しくまとめています。
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