日本時間2026年10月18日(日)、亀田和毅とブランドン・フィゲロアが米国ラスベガスで対戦する。この記事では、両者の試合映像を基に、勝敗を分ける攻防と筆者の予想をまとめた。
【10月17日追記】フィゲロアは前日計量で初回57.8kg、再計量でも57.5kgとなり、フェザー級のリミットを最終的に約400g超過した。WBA王座は空位となり、試合は予定どおり行われる。亀田が勝てば王座を獲得できるが、フィゲロアが勝っても王座は空位のままだ。
体重超過の理由はわからない。仮に減量の影響でフィゲロアが後半の手数や圧力を維持できなければ、亀田の勝機は広がる。ただし、現時点で不調と断定できる材料はないため、計量前に書いた以下の技術分析と116-112という予想は変更しない。
長いリーチを持ちながら接近戦を選ぶフィゲロアに、亀田の速いジャブは通用するのか。元プロボクサーの私が、フィゲロアのフルトン戦・ニック・ボール戦、亀田のアンジェロ・レオ戦・レラト・ドラミニ戦を見て、勝敗を分ける攻防を考えた。
結論から言うと、本線は116-112でフィゲロアの判定勝ち。ただし、接近戦が続けば8~10回にフィゲロアがTKO勝ちする展開も考えている。亀田の速さが生きる時間帯がありながら、なぜフィゲロアの勝利を予想するのかを説明したい。
亀田和毅vsフィゲロアの試合日程・基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対戦カード | WBA世界フェザー級王座が懸かる試合 ブランドン・フィゲロアvs亀田和毅(王座を獲得できるのは亀田のみ) |
| 現地日程 | 2026年10月17日(土) |
| 日本時間 | 2026年10月18日(日) |
| 会場 | ザ・チェルシー・アット・ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガス(米ネバダ州) |
| PBC掲載の中継開始予定 | 米東部時間17日午後8時/日本時間18日午前9時 |
中継開始予定は、この試合のゴングの時刻ではない。前の試合の進行によって開始時刻は変わる。PBCの発表では、フィゲロアの初防衛戦がこの興行のセミファイナルに組まれている。
両者の公表身長はフィゲロア175cm、亀田171cm。身長差は約4cmだが、リーチはフィゲロア184cm、亀田170cmで約14cm離れている。ただし、リーチの長いフィゲロアが遠くから攻撃し続けるとは限らない。そこに、この対戦の面白さがある。
フィゲロアの特徴:接近戦を選び、正面からパンチを受ける場面も
ニック・ボール戦で印象的だったのは、フィゲロアが身長とリーチを生かして離れ続けるのではなく、自ら距離を詰めて打ち合ったことだ。ボールのパンチを受けても前進を続け、最終12回に左フックでダウンを奪い、ストップ勝ちした。私には、単に体格で押した勝利とは映らなかった。
映像:フィゲロアがボールを止めた12回の場面(DAZN Boxing)
2025年2月のスティーブン・フルトンとの再戦では、フィゲロアが前進する一方、フルトンのジャブやストレートが正面から当たり、顔が跳ね上がる場面が目に付いた。フィゲロアは判定で敗れ、公式採点は117-111、116-112、116-112だった。ボール戦でも、体格で劣るボールの直線的なパンチが顔へ届く場面はあった。
フルトン戦を改めて見ると、フィゲロアは頻繁に構えを切り替えていた。対してフルトンはオーソドックスを維持し、体を半身にして長い距離でボクシングをしていた。私には、フィゲロアが構えを替える前後に体が正面を向き気味になり、フルトンの直線的なパンチが通る場面があるように見えた。ただし、被弾をスイッチだけのせいにはできない。フルトンの距離管理と打つタイミングも効いていたはずだ。
フィゲロアが自ら距離を詰めることと、構えの切り替え前後に正面が開いて見えること。この二つが、相手の直線的なパンチを通す機会につながる可能性がある。リーチが長いことと、相手のジャブやストレートを受けないことは別だ。 亀田の速いジャブを勝機として考える根拠はここにある。ただし、フルトンができたことを亀田も同じように再現できるとは限らない。
フィゲロアはスイッチヒッターと紹介されるが、私が見たボール戦ではサウスポーで構える時間が長かった。フルトン戦のように頻繁に切り替えるのか、ボール戦のように一方の構えが長くなるのかも、亀田戦の見どころだ。
ボールは直線的なパンチだけでなく、左アッパーもクリーンヒットさせていた。序盤から低い姿勢で入り、前手を下から突き上げていた。フィゲロアが前に出て頭を近づけると、迎え撃つ側にもパンチを通す機会がある。
ただし、そのまま亀田の攻略法が「左アッパー」になるわけではない。亀田はボールほど低い姿勢で戦わず、観戦した試合でも左アッパーを多用する印象はなかった。フィゲロアの入り際を狙う余地はあるが、使えるパンチと角度は亀田自身の型で考える必要がある。
亀田の特徴:速いジャブとフック、堅いガード
亀田のレオ戦で目立ったのは、パンチを出して戻すまでの速さだ。ドラミニ戦と見比べても、速いジャブ、左フック、左ボディ、接近戦で潜りながら振る右が攻撃の中心に見える。ガードを高く保って前へ出て、横からパンチを振る攻防を得意としている印象だ。
映像:亀田とレオのボディの打ち合い(ProBox TV)
ただ、ジャブを速く戻す一方、踏み込みや体の伸びを使って遠くへ届かせる場面は、私には多く見えなかった。観戦した試合では、真っすぐなワンツーより、ジャブから左フックやボディ、潜りながら振る右が目立つ。「引きが速いからワンツーが打てない」とは言えないが、正面へ届くジャブと、そこからつなぐ右ストレートは、今回とくに重要になると考える。
亀田の攻撃を単発だけと評するのも正確ではない。ドラミニとの再戦では連打で5回にダウンを奪っている。バンタム級時代のマクドネルとの初戦でも、3回に速い右でダウンを奪った。私には、マクドネル戦の一撃は重さで押し倒したというより、切れとタイミングで捉えたパンチに見えた。マクドネルはその後に立て直して判定勝ちしている。
つまり、亀田には相手を捉えてダウンを奪う可能性がある。一方、レオ戦で見た限り、速いパンチを当てた後に相手の動きを長く止める場面は少ないように感じた。今回も一度当てられるかだけでなく、フィゲロアの前進を繰り返し止められるかを見たい。

図の数値は、観戦メモを基に整理した5点満点の暫定評価案。公式データや勝率ではない。「スピード」は主にパンチの出し戻しを評価し、踏み込みの速さとは分けて考えた。
勝敗を分ける攻防:遠い距離と接近戦で課題が変わる
遠い距離:スイッチへの対応と踏み込み
フィゲロアがオーソドックスとサウスポーを切り替えれば、前手の位置や亀田が踏み込む角度も変わる。フルトン戦で見えたような切り替え前後の隙があれば、亀田の速いジャブを当てる機会にもなる。亀田の全対戦相手の構えは確認できていないため、「サウスポー戦やスイッチヒッターとの対戦経験が少ない」と試合数で断定はできない。ただ、私が確認したレオ戦やドラミニ戦だけでは、構えの変化にどう対応するかを十分には判断できない。
ここで気になるのは、亀田の手の速さと、長い距離を一気に詰める足の速さは別という点だ。私が見た試合では、速いジャブや右に比べ、遠くから瞬時に懐へ飛び込む動きはそれほど目立たなかった。14cmのリーチ差がある中で、フィゲロアが遠い距離を使い、さらに構えも変えるなら、亀田は正面から前進するだけでは自分のパンチを届かせにくいだろう。
接近戦:スイッチよりブロック後の一手
一方、フィゲロアがボール戦のように自ら前へ出れば、亀田は毎回長い踏み込みで距離を埋める必要がなくなる。フルトン戦やボール戦で見えたように、前進するフィゲロアの正面へジャブやストレートを当てる機会は生まれる。亀田が懐に入った後は、遠い距離ほど構えの切り替えに振り回されず、得意なガードと手数で戦える可能性もある。ただし、近距離でも相手のパンチの出る側や角度は変わるため、スイッチを無視できるわけではない。
問題は、亀田が一発当てた後である。正面に残れば、フィゲロアの接近戦と連打に付き合うことになる。先に当てて横へ抜けるか、王者のパンチをブロックした直後に打ち返すか。亀田には手の速さを守備から攻撃へ切り替える速さとして使ってほしい。
ブロックされたパンチ自体は、原則としてクリーンヒットには数えられない。しかし、フィゲロアが打ち続け、亀田が守るだけの時間が増えれば、亀田自身の有効打を作りにくい。ガードの堅さだけでなく、その後にどちらのパンチが当たるかがラウンドを左右する。
予想採点は116-112でフィゲロア
私の予想は、フィゲロアの判定勝ち、116-112。ダウンや減点を想定せず、亀田が4ラウンド、フィゲロアが8ラウンドを取る計算だ。
| 時間帯 | 亀田が取る予想 | フィゲロアが取る予想 |
|---|---|---|
| 1~4R | 2回 | 2回 |
| 5~12R | 2回 | 6回 |
| 合計 | 4回 | 8回 |
フルトンとの再戦では、最初の4回を3人のジャッジ全員がフルトンに付けた。これだけでフィゲロアに「序盤は様子を見る癖がある」とは言えないが、亀田が入り際にジャブを当てられれば、序盤の4回で2回を取る余地はあると予想する。中盤以降も、亀田がスピードと手数を上げる局面でさらに2回が流れる可能性がある。フィゲロアが最初から亀田のジャブを外して攻勢を強めれば、この配分は変わる。
それでも試合全体では、フィゲロアが接近戦を続け、手数と圧力で残る8回を押さえると見た。亀田が予想を覆すとすれば、速いパンチを一度当てるだけで終わらず、フィゲロアの前進を止めてから自分の攻撃を続けられたときだ。
もう一つの想定は、8~10回でのフィゲロアのTKO勝ち。これは判定予想と同時に成立する採点ではなく、亀田が距離を作れず、ブロック後も反撃できない時間が続いた場合の展開だ。亀田に耐久力があっても、フィゲロアの強打と連打を繰り返し受ければ、終盤を待たずに試合が止まる可能性がある。逆に、亀田が入り際に先に当てて正面から抜け続ければ、その展開は防げるだろう。
判定まで進むのか、王者の攻勢が中盤以降に決着へつながるのか。ゴング後は、フィゲロアが距離を詰める瞬間と、亀田がブロックした直後の一手に注目したい。


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